【毎週名馬】1988年オールカマー・スズパレード

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現役中、慢性的な脚部不安と始終闘いながら、中距離の名馬として歴史に名を残したスズパレード。彼が調教技術が発達した現在の環境に身を置いたならば、果たしてどれだけの成績を挙げられるだろうか。
(「週刊競馬ブック1988年10月3日号」表紙より引用)

 僕はオールカマーというと「復活の舞台」としての印象ばかりが先立つのだが、それを形作ったのは恐らく1999年の勝ち馬ホッカイルソーであろう。なるほど、盛りの過ぎたはずの7歳(新馬齢表記)秋、そして屈腱炎による休養を挟んで3年半ぶりの勝利がレコード駆けだったのだからそりゃ鮮烈だ。ホッカイルソーの復活以後も2010年のシンゲン、2017年のルージュバック、2018年のレイデオロといった辺りは、多々の苦難を乗り越えての復活勝利として記憶に刻まれている。中山巧者が伝統的に強いレースだけに、それまで中山に良績の無かったルージュバックの勝利は特に驚いたものだ。

 もっと時代を遡ると地方代表馬の晴れ舞台としての面がクローズアップされがちなのがこのレースだが、この文字通り「オールカマー」の時代にも「復活」の2文字をファンに強く印象付けた馬が1頭いる。新潟で行われた1988年のオールカマーの覇者スズパレードである。

 1981年生まれのスズパレードは、安定した先行力と持続するスピードを武器にした一流の中距離ランナーだった。クラシック戦線においては同馬主のスズマッハと共に皇帝シンボリルドルフに抗い、古馬になると慢性的な脚部不安と付き合いながら中山のG2・G3を勝ちまくった。時計勝負に滅法強く、唯一のG1勝ちである1987年の宝塚記念も2分12秒3の好時計で駆けていた。当時売り出し中だった4歳時のニッポーテイオーや関西の強豪たちを正攻法で一蹴した宝塚記念の勲章は、6歳を迎えて競走馬として老境に差し掛かった頃の同馬にとって大きな希望になったことだろう。

 生涯初めて西下した春のグランプリにて最高の結果を出した後、深管やスジを痛めたスズパレードは長い休養に入った。1987年秋シーズンを棒に振り、翌年もなかなか復帰の目途は立たなかった。脚元に爆弾を抱えたこの高齢馬は、タマモクロスやオグリキャップといった新世代のスターホースの活躍を横目に見ながら臍を噛んだ。そんな彼がようやく檜舞台へと帰ってきたのが、1988年9月のG3(当時)・オールカマーであった。

 この年のオールカマーは、同年春以来続く中山競馬場のスタンド改修のため新潟競馬場で施行された。スズパレードは7歳秋にして新潟初見参となったわけだが、当時の右回りの新潟コースはローカル上手のスズパレードにとって特にマイナスでは無かった。それよりも大きな不安は、やはり前年6月以来となる休み明けである。1年以上にも及ぶ休養を経た鉄砲駆けによる重賞制覇は、調教技術のすこぶる進歩した昨今でもほとんど例が無い。ましてや昭和の時代に……だが所属する富田六郎厩舎のトーンは決して低くなかった。「今までがまともな状態で使ったことが少なかったわけだが好勝負になる、と踏んでいます(原文ママ・富田秀幸調教助手:談)」骨折以外の職業病はほとんど経験したという歴戦の雄を知る男ならではの弁、である。無駄な肉が付きづらい馬らしく、馬体重も前走比変動無しの460kgとキッチリ仕上がり、堂々の単勝1番人気に支持された。

 前年の2冠牝馬マックスビューティのほか、後の名伯楽である川島正行氏が調教に携わった羽田盃馬リュウコウキングや、南関東の名手・桑島孝春騎手がロッキータイガー以来の夢を追う帝王賞馬チャンピオンスター、3歳時のスプリングSを異次元の末脚で快勝して以来人気者のマティリアルが上位人気に推されるメンバー。前年の2着馬ガルダンと並んで出走馬中最高齢となる7歳のスズパレードは、公営名古屋代表のヒデノファイターや軽快な先行力を誇るミスターブランディの逃げ争いを好位から追い掛けた。道中も2頭が飛ばしペースは決して緩まなかったが、直線に入ると“相棒”蛯沢誠治騎手の左ムチに鋭く反応。粘り込みを図るミスターブランディを楽に捉まえて、ゴール前もグイとひと脚使い力強く伸びた。宝塚記念以来、中461日の優等生の答案は、100点満点どころか120点に値する2分12秒3のコースレコードであった。

 今年のオールカマー、長い休養から復活の期待が懸かるのは5歳馬ジェネラーレウーノ。同馬はスズパレードと同様に先行力が売りの中距離ランナーである。かつてのスズパレードが同期のスズマッハと切磋琢磨したように、ジェネラーレウーノは同馬主のエタリオウらとクラシックで覇を競った。そんなジェネラーレウーノも2019年のアメリカジョッキークラブC(4着)以降屈腱炎に苦しみ、今回が1年8ヶ月ぶりの実戦となる。同馬が苦杯を嘗めたアメリカジョッキークラブCと言えば、今は亡きシャケトラがスズパレードに次ぐ中央平地重賞記録となる中391日の休養明けで制した重賞。三浦皇成騎手との新コンビ結成となるジェネラーレウーノの“中615日の答え”はどんなものか。先頭に立つとふわふわしてソラを使うという同馬だが、気性的に成熟しているかどうかも気になるところだ。

レース結果

2020年9月27日中山競馬場11R
オールカマー(G2)

1着4番センテリュオ 戸崎圭太
2着8番カレンブーケドール 津村明秀
3着7番ステイフーリッシュ 田辺裕信
本命馬7着5番ジェネラーレウーノ 三浦皇成

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