【毎週名馬】2002年ジャパンカップダート・イーグルカフェ

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イーグルカフェを管理する小島太調教師(当時)に殊勲のランフランコ・デットーリ騎手が歓喜のキス。世界屈指のエンターテイナー同士の共演と言えなくもないか。
(「Gallop臨時増刊・JRA重賞年鑑2002」129Pより引用)

 さて、本邦では久方ぶりとなるデットーリ・フィーバーの到来である。とにかくマスコミ各位が御年四十八のランフランコ・デットーリを褒める、褒める、褒めちぎる。その褒め方の度合いたるや、土日で合計3勝の騎手をそこまで褒めんでも、というぐらい。絶賛×絶賛=大絶賛の嵐は、昨年後半期の話題をさらったジョアン・モレイラを巡る報道の勢いを凌ぐものがある。来日の過程こそいびつではあったが、もはやイタリアが誇る史上屈指の伊達男にして現人神なのか、デットーリは!

 この日本競馬においてデットーリが神格化に近い扱いを受けるに至ったきっかけは、2002年のジャパンCダートおよびジャパンCにおけるG1・2連勝にほかならないだろう。そもそも2002年という年はかの東京競馬場の大改装の年であり、それまで東京ダート2100mの条件で施行されていたジャパンCダート(現・チャンピオンズC)は中山ダート1800mで、そしてジャパンCはお馴染みのチャンピオンディスタンスたる東京芝2400mでは無く、アメリカジョッキークラブCやオールカマーなどの条件として例年知られている中山芝2200mで施行されたわけだ。今振り返ってみると、いずれも鞍上のデットーリに導かれたジャパンCダートの勝ち馬イーグルカフェとジャパンCの勝ち馬ファルブラヴは例年の距離条件ではちょっと足りなかった可能性はあるように思える。どちらも中山コースで全てを燃やし尽くしたと思える勝ち方だったから、なおさらだ。補足すれば、当時の両G1は11月末の土日それぞれのメインレースとして行われていた。

 だが、もしこの年のジャパンCダートが従来の東京ダート2100mで行われていようが、デットーリはそのコースに適した乗り方を選択し、ベストを尽くしていたに違いない。2000年NHKマイルCを大ベテラン岡部幸雄の手綱で制して以降、長い不振からぼちぼちダート戦を走っていたイーグルカフェは、若い頃から出遅れ癖を抱えていた。それ故に、道中後方から競馬を進めてそろっと追い込んでは届かずという競馬を繰り返すようになっていたのだが、この中山千八のコースで凱歌を上げるべく、悩めるG1馬の手綱を任されたデットーリは、愛馬への先入観に流されることなく「中山はコーナーがきつく直線も短いので」好位差しの競馬を試みた。ゲートの出は決して良くは無かったが、幸いペースはそれほど流れなかったので容易に好位のインを確保することができた。

 このジャパンCダートの飛車角は共に3歳牡馬のアドマイヤドンとゴールドアリュール。2頭揃って芝でもなかなかの実績があった。当時は前年の同G1を異次元の走りで圧勝したクロフネや、「最強の変態」アグネスデジタルといった芝砂兼用……いわば“リバーシブル”なタイプの活躍馬がよく見受けられた時代。やはり芝のG1馬であるイーグルカフェも、前年のG3武蔵野Sでクロフネの2着というダートでの実績はあったが、勝ち馬から9馬身も離された上での連対ということもあり、戦前の評価は20.8倍の単勝5番人気と芳しくない。

 しかし伏兵扱いの5歳馬イーグルカフェは、世界のデットーリに導かれて一世一代の走りを見せる。直線でまず抜け出したのは道中2番手を追走した2番人気のゴールドアリュールだったが、初めての古馬G1でいつもの二の脚が見られない。次いで1番人気アドマイヤドンが先頭に立たんとアタックするも、インの合間を縫って進出するイーグルカフェの伸びが優った。左ムチを盛んに飛ばすデットーリは最内にできたスペースを真っ先に奪い、すかさずムチを右手に持ち替えると、追撃を試みたアドマイヤドン、そして外から後方一気を図った13番人気の古豪リージェントブラフを1馬身差抑え込んだ。

 「フランキーは世界一のジョッキーですから、彼なら違う結果を出してくれると思っていました(小島太調教師:談)」

 「こんなふうに馬を仕上げてくれたトレーナーには感謝しています(ランフランコ・デットーリ騎手:談)」

 芝とダート両方の中央G1を制したのは先述のクロフネ、 アグネスデジタルに続いてイーグルカフェが3頭目。その当時、どうにももどかしいイーグルカフェを“その気”にさせたデットーリの手腕に誰もが驚嘆したものだが、彼らにとっては必然だったのかも知れない。このデットーリによる驚きのG1制覇は、翌日のジャパンCで彼が挙げた母国イタリア調教馬での大金星へと繋がっていく。

 ろくに軽種馬に触ったことも乗ったことも無い全くの外野の意見で恐縮だが、前述のジャパンCダートとジャパンCでの雄姿、または10着に終わったルックトゥワイスにおける今年のジャパンCの最後の直線での騎乗ぶりを見るに、デットーリという騎手はその長い手足を利用して実に巧みに追っているように見える。馬を動かすのが大変上手というか、馬上での屈伸運動を騎乗馬の速力に変換するための無駄が無いのだろう。そのフォームは軽快なアメリカンスタイルでも、優雅なヨーロピアンスタイルでも無い。デットーリ独自の型である。それでいてムチの持ち替えや進路取りも上手。基本的な所作で優り、おまけに勝負勘も抜群とくれば、全体として場数の少ない日本の騎手はちょっと太刀打ちできない。要するに今年のチャンピオンズCの本命はオメガパフューム。推奨理由はこれ以上語るまでもない。

レース結果

2019年12月1日中京競馬場11R
チャンピオンズC(G1)

1着5番クリソベリル 川田将雅
2着11番ゴールドドリーム C.ルメール
3着4番インティ 武豊
本命馬6着6番オメガパフューム L.デットーリ

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